JFCネットワークは、日本人とフィリピン人の間に生まれた子どもたち(Japanese-Filipino Children:JFC)を支援するNPOです。

特定非営利活動法人 JFCネットワーク

国籍確認訴訟12条とは?

[ 国籍確認訴訟とは? ]

日本人の父と外国人の母が結婚し、その後に子どもが日本国外で生まれた場合、子どもの出生から3ヶ月以内にその出生を在外日本大使館または日本の市町村役場に届け出ないと日本国籍を喪失してしまいます(国籍法12条、戸籍法104条)。

JFCネットワークの総受理ケース中、両親の結婚後に生まれた子どもは472人で、そのうちフィリピンで生まれた子は341人(72.25%)でした。フィリピンで生まれた子(341人)のうち、日本の国籍を留保していた子どもは111人(32.55%)で、230人(67.45%)は国籍を喪失していました(2011年12月31日現在)。国籍喪失ケースのうち、現在までに国籍再取得できたケースは31件(13.48%)に過ぎません。

このようにたくさんの国籍喪失ケースが発生しているのは、日本人の父・フィリピン人の母ともに国籍喪失制度(国籍法12条)のことを知らず、フィリピンで出生後直ちに日本大使館に出生届をすることの重要性を認識していないからです。さらに国籍喪失制度は一般にはなじみのない特殊な制度です。ちなみに日本で出生したJFCは婚内・婚外を問わず、また出生後何年経った後でも大使館に出生を届け出ればフィリピン国籍を取得できます。

日本国籍のない子は、日本人の父の戸籍に記載されません。このことは認知された婚外子が、外国籍であっても、父の身分事項欄に記載されることと比べて不均衡であるだけでなく、身分関係の公証という戸籍の機能を害するばかりか、相続発生の場合に相続人を知らずに紛争の火種を残すという現実的な問題も生じさせます。

日本国籍を喪失した子どもは、日本に住所を有するときには、届出によって日本国籍を再取得することができます。(国籍法17条1項)。しかしながら、国籍の再取得の手続を行うには、フィリピンに暮らしている母子が来日し、短期滞在の在留資格で入国した後、在留資格を定住者や日本人の配偶者等に変更して日本に居住し、仕事を探して生活する一方、子どもが15歳以下の場合には、家庭裁判所において親権者指定の申立を行い、単独親権を得て法務局に対して国籍再取得の手続を行わなければなりません。

何よりも、出生後3か月以内に出生の届出を国籍留保届とともに行わなかったことは子どもの意思ではなく、子どもに罪はありません。

[ 第一陣、第二陣提訴 ]

2010年2月2日に第一陣、同年7月21日には第二陣が国籍確認訴訟を東京地方裁判所に提訴しました。国籍確認訴訟弁護団弁護士の近藤博徳先生からの提訴理由を以下に添付します。

「日本人とフィリピン人の夫婦の子どもとしてフィリピンで生まれ、いったんは日本国籍を取得したにもかかわらず、国籍法12条の規定によって日本国籍を喪失した子どもたちが、2月2日および7月21日、東京地方裁判所に、日本国籍の確認を求める訴訟を提起しました。
国籍法12条は、「外国で生まれ、出生によって外国籍を取得した日本国民は、出生後一定の期間内に日本国籍を留保するとの届出をしないと、日本国籍を喪失する。」と規定しています。そして戸籍法は、届出期間を「3ヶ月」と規定しています。

原告の子どもたちは、出生後3ヶ月以内にマニラの日本大使館に出生届と国籍留保の届出をしなかったために、日本国籍を喪失しました。

けれども、外国で生まれた日本人の子どもの国籍を奪うこの国籍法12条には合理的な根拠がありません。例えば、一昨年の最高裁判決によって、結婚しない両親から生まれた子は、20才までに日本人父から認知され、かつ届出をすれば、日本国籍を取れるのに、生まれたときから日本人の父の子がなぜ3ヶ月で日本国籍を奪われなければならないのか。

争点はこの一点です。
JFCネットワークの統計では、これまで受理したフィリピンケースのうち、278人が結婚した日本人父とフィリピン人母の間に生まれた子で、そのうち約70%が日本国籍を喪失しています。

2008年の最高裁判決の子どもたちは、もともと日本国籍をもっていない子ども達でした。けれども今回の原告は、もともと日本国籍をもっていたのです。なぜ国籍を奪う必要があったのか、この点を大いに争ってゆきたいと思います。」

弁護士 近藤博徳

国籍確認訴訟12条 イメージ写真

子ども本人の意思によらない国籍法12条による国籍はく奪は、国民の権利保障と法の下に平等を定めた憲法13条および14条1項に違反します。

と子どもたちは主張し、日本国籍保有の確認を求めています。

第13条(個人の尊重)
全て国民は、個人として尊重される。
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限の尊重を必要とする。

第14条(法の下の平等)
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

[ 第1回口頭弁論 ]

4月21日(水)午前11時から東京地方裁判所で国籍確認訴訟の第1回口頭弁論が開かれました。フィリピンから4人の原告のうち2人のJFCとそのお父さんが来られ、意見陳述が行なわれました。意見陳述したのは石山博美さんと長女ヒロコさん(20)、丸山峰男さんと3男ダイチくん(12)です。ダイチくんもヒロコさんも出生から3カ月以内に日本大使館や日本の市町村役場に国籍留保届けとともに出生届を出さなかったため、日本国籍を喪失しています。

4人の意見陳述はとても素晴らしくそれぞれが説得力を持ち心に響いてくるものがありました。ダイチくんのお父さんの丸山峰男さんは5人のお子さんがいますがきょうだいのうちダイチくんだけが国籍喪失をしています。熱意を込めて裁判官に訴えていた姿が印象的でした。

「国籍法12条は、親の過失とも言えない過失に対し、親を罰せずに無実の子どもの国籍を剥奪するという不当なものです」「ダイチは私の正式な結婚後に生まれた嫡出子です。嫡出子であるがために国籍法12条の適用を受け、本来生まれた時点で日本国籍を持っているのにもかかわらず、兄弟の中で唯一人、日本国籍を失いました。これは大きな矛盾ではないでしょうか。私が正式な結婚をしなければ、ダイチは日本国籍をもらえていたはずで、結婚をしたがために子どもが国籍を失ってしまったなどという法律のどこに合理性があるのでしょうか。」「親にとって、子どもが平等でないことほど辛いことはありません。日本国籍を失った子が自分の人生設計を他の兄弟と同じにできないことを知っているために、親の苦しみは大変に重いものとなっています。」

ヒロコさんのお父さんの石山さんは「1週間の遅れでヒロコが国籍を失ったことを知りました。娘の将来を左右する1週間がそれほど重大事なのでしょうか」「自分を責める気持ちが消えたことはないと」と一言一言をかみ締めるように意見を述べていました。

[ 第2回口頭弁論 原告の意見陳述 ]

国籍確認訴訟の原告22名のうちセブ・ネグロス地方の原告から父子1組(2名)、父1名、マニラ・マリガヤハウスの原告から母子1組(2名)、成人した原告2名、未成年1名の来日が実現しました! 12月21日にデルタ航空で来日し、そして、12月22日(水)1時半から東京地方裁判所705号法廷で意見陳述を行ない、23日(木)に観光をして帰国、という駆け足でしたが、とても中身の濃い充実した滞在になりました。来日にあたり、ご寄付を下さいました皆様方に心より感謝したいと思います。ありがとうございました!!

原告の子どもたちの意見陳述はこちら
> 一審判決に対し、Batis Yohgiが声明文を出しました。(English日本語

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※Batis YOGHとは、フィリピンのJFCユースの団体です。

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Batis-YOGHI (Youth Organization that Gives Hope and Inspiration)

West Triangle Homes, Quezon City, Philippines
http:///www.batisyoghi.blogspot.com; htttp://www.facebook/batisyoghi
Email: batis.yoghi@gmail.com ; batis , yoghi@yahoo.com
Telefax: 9257843

[ 一審判決! 敗訴・・・! ]

2012年3月23日(金)午後1時25分より東京地方裁判所705号法廷において、国籍確認訴訟の第一審判決が下されました。

日本に在住する原告2名のうち1名については国が、1名は判決で国籍が認められたものの、非常に残念なことに残るフィリピン在住の26名については日本国籍が認められませんでした。国籍法12条の違憲無効の主張は斥けられ、実質的な敗訴判決でした。JFCネットワークのフィリピン事務所・マリガヤハウスの原告達もみな国籍が認められませんでした。判決理由は、基本的に国の主張にそったものです。東京地裁判決は、国籍法12条が合憲である理由として、外国で生まれた子の日本国籍は実効性を欠く可能性があるとか、重国籍の発生を防止する必要があるなどの点を挙げています。しかしながら、生まれた国を問わず日本国籍を取得できる日本人の父親から認知を受けた婚外子との間に発生している差別についての特段の言及はありませんでした

国籍確認訴訟・違憲判決への署名の協力をお願いします!

国籍法12条は、出生によって取得した日本国籍を事後的に喪失させる点で個人の尊厳の保障を規定した憲法13条に反するとともに、

①日本で生まれた者と外国で生まれた者とを差別する
②子どもの意思と無関係に父母が留保の意思表示をしたかどうかで差別する
③外国で生まれた婚外子(父から認知を受ければ出生後の時間の経過を問わず日本国籍を取得できる)と婚内子を差別する

点で法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反するものです。

第一審判決を受けて、JFCネットワークでは、署名活動を始めました。皆様のご賛同、ご協力をいただければと思います。

署名第2回締め切り 2012年9月30日(再延長しました)
オンライン署名: http://www.shomei.tv/project-1940.html
※Webから署名できるようになりました。ご利用下さい。

署名第2回締め切り 日本語版Petisyon(TAGALOG)Pettition(English)
※こちらを印刷し、署名をお願いします。

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[ 第1回控訴審期日 ]

2012年7月17日午前10時から、国籍確認訴訟・控訴審の第1回期日がありました。 弁護士さんからは事前に控訴理由書を提出しており,その陳述手続が行われました。
次回は、国側からの反論が提出される予定ですが、準備に時間を要するとのことで、反論書面の提出期限が10月5日となりました。さらに双方当事者及び裁判所の日程調整が付かず、第2回期日は10月30日午後2時となりました。
今回は代理人のみの出席となりましたが、次回には当事者の意見陳述ができるよう、裁判所と調整をしたいと思います。意見陳述が決まりましたらご連絡いたしますので、皆さんの傍聴をどうぞよろしくお願いします。

[ 国籍確認訴訟、審理が終了し、次回判決です! ]

2012年10月30日(火)、国籍確認訴訟の控訴審第2回口頭弁論期日がありました。こちらが求めていた原告の丸山さんの証人尋問の申請は却下され、その日で審理を終了しました。 こちらが提出を予定している書面は、12月10日までに提出することになり、来年2013年1月22日、午後1時半~東京地方裁判所808号法廷にて判決言い渡しとなりました。

前回の裁判の時から、裁判官は早めの終結を考えている様子が見て取れ、国側から提出された書面もこの意向に沿うものでした。そのため、結審の可能性は想定され、これに対抗するために丸山さんの証人尋問の申請をしたのですが、――証人尋問をするとなれば今日終結することはできないので――、尋問の必要性はない、と判断されて、終結に至ったものです。

署名へのご協力を本当にありがとうございました!

集まった署名は、オンライン署名(英語:201名、日本語:124名)=325名、手書きの署名が496名、合計821名になりました。今回、署名を裁判所へ提出致しました。

[ 控訴審判決、敗訴! ]

2013年1月22日、国籍確認訴訟の控訴審判決がありました。残念ながら、控訴審も一審判決を支持し、原告らの請求を棄却しました。

しかも、憲法違反との原告らの主張を否定した理由について、控訴審判決は、「一審判決が述べている通りである」とするのみで、自らは一言も憲法判断に触れていません。
憲法に関する問題で、しかも国籍という非常に重要な事柄に関する事件なのに、自らの言葉で合憲・違憲についての考えを語り、当事者を説得しようという姿勢が全く見られません。
こんな裁判所、本当に必要なのか、と思ってしまう、まさに司法の役割を放棄したとしかいえない判決です。

唯一、原告の1人について控訴審で新たに行った、「大使館に相談に行った際に、3ヶ月以内に国籍留保届をしないと日本国籍を喪失する、という説明を受けなかったため、国籍を喪失した」という主張についても、一審で主張できたはずなのに主張しなかったことを不利益に捉え、しかも法律を知らないのは本人や親の責任であって、大使館の職員は3ヶ月以内に届け出る必要があることを告げているのだから、何ら問題はない」として切り捨てました。

原告たちのたたかいは最高裁に続きます。今後とも、ご支援よろしくお願いします。

[ 国籍確認訴訟最高裁判決は上告棄却 ]

国籍法12条の違憲性を争った国籍確認訴訟の最高裁判所の判決が、先日3月10日に言い渡されました。判決は、上告棄却という残念な結果でした。

2010年に提訴して5年。長いたたかいでした。判決の内容はまるでこちらの主張を聞いておらず、悔しく憤りさえ感じます。

あきらめきれません。引き続き、この問題解決に向けて取り組んでいきたいと思っています。

弁護団代表の近藤博徳先生のコメントを紹介いたします。

<国籍法12条とは?>
国籍法12条は、日本人の子どもであって出生と同時に日本国籍を取得した者が、外国で生まれ、外国籍も取得している場合には、出生から3ヶ月以内に国籍留保の意思表示をしないと日本国籍を喪失する、という制度です。
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JFC弁護団の弁護士の近藤博徳です。

国籍確認訴訟の最高裁判決についてご報告をします。 長文となりますが、ご容赦下さい。

マリガヤハウスのクライアント達が原告に参加して裁判を戦ってきました、国籍法12条の違憲性を争った国籍確認訴訟の最高裁判所の判決が、先日3月10日に言い渡されました。

判決は、上告棄却という残念な結果でした。 判決文は、裁判所のホームページから検索することができます。関心のある方は、平成27年3月10日、国籍確認訴訟、第三小法廷、などのキーワードで探してみて下さい。 国籍法12条は、日本人の子どもであって出生と同時に日本国籍を取得した者が、外国で生まれ、外国籍も取得している場合には、出生から3ヶ月以内に国籍留保の意思表示をしないと日本国籍を喪失する、という制度です。

裁判の原告となった子どもたち(JFC)の母親(フィリピン人)はもちろん、日本人の父親ですらこのような制度の存在を全く知らず、そのために子どもたちが生まれてから3ヶ月以内に日本大使館に国籍留保届をしなかったために、JFCは日本国籍を喪失しました。

そこで、この国籍法12条は、
① 日本で生まれた子と外国で生まれた子を差別する(日本で生まれた場合は国籍留保をしなくても国籍を喪失しない)、
② 結婚していない両親から生まれ日本人父から認知を受けたこと結婚している両親から生まれた子を差別する(結婚していない両親から生まれ日本人父から認知を受けた場合には外国に住んでいても国籍が取得できる)、
という差別を生んでおり、法の下の平等を保障した憲法14条違反であって無効である、したがってJFCらは生まれたときから日本国籍を有している、と主張して、裁判を起こしたのです。

裁判は、一審、二審とも原告側が敗訴していましたが、最高裁判所に上告をしてから、丸2年が経過していました。上告が認められない事件では比較的早く判決が言い渡されることや、2006年の国籍法違憲判決の時も上告から1年あまりで判決になったことから、今回も逆転勝訴の可能性があるのではないか、と期待していました。

2月下旬に、裁判所から判決言い渡しの連絡があり、敗訴であることが事実上分かった後も、これだけの時間をかけて審理したのだから、相当突っ込んだ判断が示されているのではないか、と考えていました。

しかし、判決文を受け取ってみると、本文はわずか5頁、判断内容が示されている部分は僅か3頁に過ぎませんでした。しかも内容を見ても、一審判決をごくごく簡単に書き直したものであって、ほとんど内容のない判決でした。

判決は、国籍法12条の立法理由とされる、「外国で生まれた子どもの国籍は形骸化する可能性があるから、その発生を抑止する必要がある」、「重国籍を防止する必要がある」の2点について、いずれも合理性があると判断しました。またこのような立法目的を達成するために、日本国内で生まれた子と外国で生まれた子を差別扱いすることも合理性がある、としました。

更に判決は、結婚していない両親から生まれ、日本人父から認知を受けた子との差別について、制度が違うので比較をする意味はない、としました。 けれども、生まれた瞬間にその国籍が形骸化しているかどうかを決めることなど、不可能です。 また、重国籍は他の場面では容認されているのに、外国で生まれた場合(しかも生まれたときに日本国籍をもっている場合)だけ重国籍はだめ、というのは理屈が通りません。

さらに、認知を受けただけの子は国籍が取れるのに、結婚した両親の子は国籍を失う、という結果が非常識であることは誰でも直感的に分かることで、「制度が違う」という理由付けは説明になっていません。

このように、最高裁判所の判断は全く無内容で、結論だけでなくその判断理由についてもとても残念なものです。

原告のJFCやその親たちも、今回の判断にはとても落胆することと思われます。

けれども、最高裁判所の判決が出た以上、この事件はこれで終了となりました。

みなさま、長い間ご支援いただき、ありがとうございました。

今回は非常に残念な結末でしたが、いずれまた別の機会にリベンジを試みたいと思っています。

JFC弁護団 弁護士 近藤博徳


資料

署名用紙

新聞記事

マニラ新聞

原告の意見陳述